今回は3331のnap galleryで開催している、真部知胤・野沢裕 二人展「できるだけ/遠くをみろ」の中から、真部知胤さんの作品を紹介します。
真部さんは2009年に多摩美術大学大学院を修了し、これまでもギャラリーでの個展や自分自身のアトリエでの作品発表を行っています。今回の二人展は結城加代子さんの企画によって実現されたものであり、二人展の連続シリーズ「SLASH」の7回目だということです。
真部さんの作風を言葉で表現すると、「ひたすら」とか「こつこつ」とか「執拗に」といった形容詞が、ぴったりくるような気がします。
さてゴタクはこの程度にして、実際の作品を見ていきましょう。まずひとつ目は「Epiphany」と題されたものです。私のようなIT関係者がEpiphanyと聞くと、どうも「LinuxのWebブラウザか?」と思ってしまうのですが、たぶんそういう意味ではないはずです。“ひらめき”とか“直感”とか“悟り”とか、そういう意味で使っているのだと思います。そういえば10年くらい前、E.piphanyというCRMの会社の仕事をしたことがあったなあ。あの会社、まだあるのかなあ。いやこれも余計な話か。
まるで土偶のような造形が、なんだかポワポワしたもので作られています。
さてこのポワポワした素材は、いったい何だと思いますか。実は埃(ホコリ)なんです。部屋の中の埃を集めて、その中からきれいな繊維になっているものを選別して、この形を作っているのだそうです。結城さんは「純度の高い埃」と表現していました。
近寄ってみるとこんな感じ。
なるほど、純度の高い埃、ですか。確かに。
他の作品も見ていきましょう。お次は「広告編み継ぎ接ぎ髑髏文籠」です。
よく見ると、逆さまになった髑髏の顔が見えます。これはあれでしょうか、織田信長が浅井家を攻め滅ぼした時に浅井長政の頭骨で髑髏杯を作ったという、あの話にインスパイアされているのでしょうか。それともチベットの聖なる杯「カパラ」がモチーフなのか。
それはさておき、これも材料が面白い。タイトルが示すとおり、広告(チラシ)を細く丸め、籐のように組んで作られているのです。接写するとこんな感じです。
紙面の色の配分を活かしながら、白と黒のコントラストで髑髏の顔を作っていく。これは楽しそうだ。
同じような作品がもうひとつ。「広告編み火炎型籠」です。
これは明らかに、縄文時代の火炎土器がモチーフになっていますね。
これだけきれいにグラデーションがかかっていると、チラシで作られているなんて、思えなくなります。
最後にもうひとつ。これはドローイングなのですが・・・
これは何なんすかね?石造りの部屋の中で、牛が縛られて頸を切られている。そしてその周りには毛糸玉?
「この絵は回文になっているんですよ」と結城さん。絵の中に毛糸と生贄がいるので、タイトルは「絵に毛糸と生贄」。「エニケイトトイケニエ」。逆から読んでも「エニケイトトイケニエ」。なるほど。
こういうオチがある絵も悪くないっす。楽しめます。
真部知胤・野沢裕 二人展「できるだけ/遠くをみろ」、4月29日(日)までやっています。ここでは真部知胤さんを紹介しましたが、野沢さんの作品群もぜひお楽しみください。2人の作品群がどのような関係性を生み出すのか、このあたりも重要なテーマらしいです。これについてはうまく表現できないので、ご自身の目でお確かめあれ。
次回は結城さんに教えていただいた、TALION GALLERYの展覧会を取り上げたいなあと思っています。