こんにちは。オプショナルアーツの山川です。
今回はGALLERY MoMo 両国で行われている「TETTA展 incloud」をご紹介します。
TETTAさんは2007年に多摩美術大学油画専攻を卒業、2009年に同大学院油画領域を修了し、仏像をテーマにした作品を制作し続けている作家さんです。油彩による平面作品だけではなく、デジタル合成写真や、観音様に扮したパフォーマンスなど、多岐にわたる活動を展開。2010年からは「皆で仏になろう!」を合い言葉に、1000人の参加者に仏像の扮装をしてもらう「三十三間堂プロジェクト」という、ユニークなプロジェクトも行っています。
今回の展示のテーマは「自仏画」。平等院鳳凰堂の雲中供養菩薩像をモチーフに、現代風の服を着てポーズを取る合計14人の女性の全身像が、木目も露わなパネルの上に油彩と墨で描かれています。
髪型こそちょっと不思議な感じがしますが、それ以外はどれも現代風の女性たちです。でもみんなそれぞれ、雲中供養菩薩の格好をしているのです。
例えば左側のふたりは、それぞれ「南二号」と「北十号」のポーズを取っています。
「南二号」とか「北十号」というのは、雲中供養菩薩を識別する番号です。雲中供養菩薩は、平等院鳳凰堂の母屋内側の長押上の小壁に、コの字形に並べて掛けられているのですが、北側に並んでいるものを「北○○号」、南側に並んでいるものを「南○○号」と呼んで区別しているのです。
右側のふたりは「北二十四号」と「北二十二号」です。
他の「自仏画」も、それぞれ元になっている菩薩像があります。元の菩薩像と並べながら、一部だけですが、見ていきましょう。
作家ステートメントには
つまり仏像は、その時代の「最先端の流行」が詰まっているもの。
13年、仏像をモチーフに描き続けています。
仏像に「今」を閉じ込めて保存しようと思っています。
とあります。なるほど仏像の姿形は、現代風にアレンジしても、決して違和感はない。古い仏像は表面の色がはげ落ちているため地味な印象を受けますが、もともとは極彩色で彩られていたという話を聞いたことがあります。当時の人々にとって仏像は、最先端ファッションを具現化した、一種のアイドル像のような存在だったのでしょう。
それにしてもこの作家には、仏像に対する愛が溢れている。好きで好きでたまらない、といった感じです。それも“他者に対する愛”ではなく、“自己愛の延長”としての愛、あるいは自己と同一化してしまいたいという欲求とでもいうべきでしょうか。奥の部屋に飾られている鉛筆画や、作品集のファイルを眺めていると、それがひしひしと伝わってきます。
例えばこれ。
じつに美形の千手観音です。ちょっとだけ「ジョジョの奇妙な冒険」の登場人物を彷彿とさせます。表情とポージングが、過剰なほどにカッコイイ。
それから作品集ファイルにあった、右のコミカルな絵もいい。タイトルは『仏像漫画「まんまんだらだら」下痢気味の釈迦』。こういうの、好きです。
「TETTA展 incloud」、5月19日(土)までやっています。会場には「平等院 雲中供養菩薩」の写真集も置いてあります。ぜひこの冊子を片手に「この菩薩像がTETTAさんの手にかかるとこうなるのか」と確認しながら、じっくりと作品を楽しんでみてください。それから奥の部屋にある作品集ファイルも、必見ですよ。