こんにちは。オプショナルアーツの山川です。
12月12日(月)に、江古田ユニバースを見に行きました。そこで出会った「ちょっと面白いアート」を、いくつかご紹介したいと思います。
実は私、30年くらい前にこの近辺の高校に通っていました。でも卒業後はほとんど江古田に来たことがありません。江古田駅で降りたのは、もう四半世紀ぶりでしょうか。
学生の頃の駅舎はけっこう古い建物で、料金精算窓口の石のカウンターなんて、その上で硬貨をやりとりしているせいか、丸く窪んでいたくらいでした。それに比べると今の江古田駅は、見違えるようにきれいです。まあ時代の流れから言って当然のことではあるのですが、ちょっとびっくりしました。
江古田駅南口を出て最初に向かったのは、インフォメーションセンターになっている「ギャラリー古藤」です。千川通りに出てしばらく西へと歩きます。「30年前にはこの辺にノーパン喫茶があって、1年くらいでつぶれてたよなあ」といった、どうでもいい記憶が蘇ります。武蔵大学のキャンパスが始まるあたり、その向かい側にギャラリー古藤があります。
ギャラリーの前で出迎えてくれたのは、全身に包帯を巻いた1台の車。たぶん軽ですね。寺田忍さんのアート作品です。
個人的な意見を正直に言ってしまうと、既製品にちょっと手を加えて「現代アートです」っていうのは、あまり好きではありません。オカネを払って入った美術館でこういったモノを見せられると「なんだかなあ」とがっかりします。もちろん“レディメイド”的な流れを否定するつもりはありませんが、このような作品はそれなりに強い背景やストーリーがあって、初めて成立するのではないかと思うのです。デュシャンがあの時代にやったからストーリーができるけど、他の人が形だけまねても面白くない。「現代アートがわかってないヤツ」と一刀両断にされちゃうかもしれませんが、一般的な人々の中には、このように感じている人も少なくないと思います。もちろんこれは個人的な好みであって、善し悪しの評価をしているわけではありません。念のため。
実はこの作品を見たときも、一瞬「お、出たな(笑)」と思ったんですよ。でもこれが意外と悪くない。たぶんギャラリーの駐車場に置いてある、というのがいいのかもしれない。この手の現代アートって、置かれる場所でかなり印象が変わるんだなあ。そう再確認しました。
他にもギャラリーの中には、包帯を巻いたピアノがあります。これが美術館であれば「なんだかなあ」と思っちゃう気がするのですが、ざわざわとした日常的な空間にあると、なんだか面白い。作品単体の面白さというよりも、この作品が存在することで、その回りの日常的な空間がちょっとゆがむというか、ずれるというか、質が変わってしまうような印象なんです。なるほどなあ。
それから、巻いているのは確かに包帯なのですが、純白のウェディングドレスのようにも見える。包帯ってなんだか禍々しいイメージを喚起しやすいですが、全体に巻いてしまうとむしろすがすがしい。一種のコスチュームになってしまうんですね。
たまたま作者の寺田さんもいらっしゃったので、作品とのツーショットも。
それからこの作品にまつわる、ちょっと面白い話も聞かせていただきました。
ギャラリーの前の道を歩いていた人が
「この車どうしちゃったんですか」
と訪ねてきたので、いたずら心を出して
「いま修理中なんですよ」
と答えたんだそうです。そうしたらその人は
「そうなんですか」と納得して、
そのまま歩き去ったそうです。
おかしいですよね。おかしくありませんか。
それはともかく、江古田ユニバースは2011年12月18日(日)までの開催です。
興味のある方はぜひ。
江古田ユニバースシリーズ、続きます。こちらもどうぞ。