ひとめ見てわかるように、写実性の追求というか、リアリティの高さが大きな特徴です。ちょっと離れて見ていると、まるで写真を見ているかのような気分になります。
近寄ってみても、かなり高い精度で描かれていることがわかります。
「制作」は東京五美大連合卒展にも出展されていましたが、今回の多摩美卒展ではもう1点、「自画像」という作品も展示されていました。
これもなかなかのリアリティです。ちょっと明和電気の土佐信道社長を思い起こさせる、細面のイケメンですね。
私が今年、東京芸大・武蔵美・多摩美の卒展で見た中では、もっとも写実性が高い作家だと思います。「まるで写真のよう」なら「写真でもいいじゃん」という話もあるとは思うのですが、でもこれだけ対象物をリアルに写し取れる技術というのも、一種の異能だという気がします。
こういう異能を目の前にドンと置かれると、私のような無能者は畏怖せざるを得ない。それにやっぱり、見ていて気持ちいい。
CGが実用化される前、そう、もうかれこれ30年くらい前だと思いますが、「スーパーリアルイラストレーション」というものがけっこう流行っていて、私たちも驚愕しながら見ていた記憶があります。その頃の感激をちょっとだけ思い出しました。
もちろん最近はコンピューター処理を行えば、それほど絵心がなくてもリアルな画像を作れます。でもやっぱり、そんな時代でも、人の手で、油彩で描かれたリアルな絵というのは、いいもんだなあと思うんです。